DNAミスマッチ修復機構マイクロサテライト不安定性(MSI)検査
マイクロサテライト不安定性(MSI)検査とは
細胞では、細胞分裂にともなうDNA複製時に塩基の不対合(ミスマッチ)がある場合、ミスマッチ修復機構が働いて、それを修復します。この修復機構の機能低下により、さまざまな遺伝子の異常が積み重なり、細胞ががん化することがあります。この修復機能を担うタンパクをコードしている遺伝子はミスマッチ修復遺伝子と呼ばれます。リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん、Hereditary Nonpolyposis Colon Cancer :HNPCC)は、ミスマッチ修復遺伝子であるMLH1、MSH2、MSH6などの生殖細胞系列の変異が原因であることが知られています。
DNAの中で1~数塩基の塩基配列が繰り返すマイクロサテライトは、DNA複製時に繰り返し回数(反復回数)のエラーが生じやすい部分です。ミスマッチ修復機構の機能低下によって腫瘍部位と非腫瘍部位でマイクロサテライトの反復回数に違い(ばらつき)が生じます。これをマイクロサテライト不安定性(Microsatellite Instability:MSI)と呼びます。リンチ症候群(HNPCC)の腫瘍の約90%でMSIが認められます。MSI検査は、マイクロサテライトの反復回数を調べミスマッチ修復遺伝子が機能しているかどうかを予測する検査で、リンチ症候群(HNPCC)の補助診断として有用と考えられています。
なお、本検査は、2007年6月より悪性腫瘍遺伝子検査として保険収載されています。
解析結果例

- MSIが認められるシグナルピーク
- MSI検査では、解析した各マーカーについて、MSI陽性(+)または陰性(-)の判定後、MSI陽性(+)であったマーカー数より総合判定を致します。上記の解析例では『MSI-H』としてご報告致します。
検査手順

検体は、腫瘍部位・非腫瘍部位のセットでご提出下さい。それぞれの検体からDNAを抽出した後、MSI検査用として国際的に推奨されている Bethesdaマーカー(右表参照)領域をPCR増幅します。その後、キャピラリー電気泳動にてフラグメント解析を行い、腫瘍部位・非腫瘍部位の反復回数を比較し、判定を行います。

本解析の概要
| 検査項目名 | 解析内容 | 検体量 | 保存条件 | 所要日数 |
|---|---|---|---|---|
| マイクロサテライト 不安定性(MSI)検査 | マイクロサテライトの 反復回数解析による不安定性検査 | 腫瘍部位・非腫瘍部位 ともに 新鮮凍結組織 各25mg または 未染色の病理標本 5~10μm厚 5~10枚 | 凍結(組織) または 室温(標本) | 約2週間 |
- ご出検に際してのご注意
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- ご提出いただく腫瘍組織検体には組織全体に占める腫瘍部位の割合が40%以上となるものを選び、ご提出下さい。
- 病理標本(未染色スライド)の場合で腫瘍部位の割合が40%に満たない場合には、腫瘍部位をマーキングしたHE染色済みのスライド(カラーコピーでも可)と共にご提出下さい。
- 病理標本の場合には、固定条件などによるDNA分解のため、解析不能になる場合があります。
その場合も、検査実施料を申し受けますので予めご了承ください。 - 非腫瘍部位の検体につきましては、血液2mL(EDTA2Na)でも代用して解析可能です。
保険点数
本検査は、厚生労働省保険局からの通達により、下記の要領にて保険点数が適用されております。
- D004 の15 悪性腫瘍遺伝子検査(2,000点)<一部抜粋>
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- 悪性腫瘍遺伝子検査は、固形腫瘍の腫瘍細胞を検体とし、PCR法、SSCP法、RFLP法等を用いて、悪性腫瘍の詳細な診断及び治療法の選択を目的として悪性腫瘍患者本人に対して行った、≪中略≫家族性非ポリポージス大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性検査について、患者1人につき1回に限り算定する。
- 悪性腫瘍遺伝子検査を算定するに当たっては、その目的、結果及び選択した治療法を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
- ご留意ください
- MSI検査は、リンチ症候群(HNPCC)の原因遺伝子であるMLH1/MSH2/MSH6遺伝子の機能を調べる検査ですので、慎重に取り扱われるべきと考えられています。日本家族性腫瘍学会の「家族性非ポリポーシス大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性検査の実施についての見解と要望」では、MSI 検査を実施するにあたっては「事前に遺伝性腫瘍の可能性について十分な説明を行ない、検査結果が陽性であった場合には家族性非ポリポーシス大腸癌についての遺伝カウンセリングと原因遺伝子の遺伝子検査が受けられる機会の提供、あるいは自施設での実施が困難な場合には、対応可能な施設を紹介する等の配慮が求められるべきと考えられる」とされています。