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ヒト遺伝子検査事業を通じてより良い医療を実現したい。それが我々の願いです。

リンチ症候群の遺伝子診断 MLH1/MSH2/MSH6/PMS2/EPCAM遺伝子検査のご案内

関与する遺伝子

関与する遺伝子
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MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、PMS2遺伝子

リンチ症候群でみられるがんは、ミスマッチ修復系で働くタンパクをコードしている遺伝子の変異が原因で発症すると考えられています。ミスマッチ修復系で働くタンパクとしてこれまでに6種類のタンパク(MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、MLH3、MSH3)が報告されています。これらをコードしている6種類の遺伝子はまとめてMMR(mismatch repair: MMR)遺伝子と呼ばれています。MMR遺伝子のうち生殖細胞系列の病的変異がリンチ症候群に関与していると報告されているのは、4種類―MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、PMS2遺伝子です6)

[ MLH1 ]
ヒト染色体3p21.3に存在し、合計19個のエクソンからなる。MLH1遺伝子は756個のアミノ酸で構成されるタンパクをコードしている。
MLH1タンパクは、PMS2タンパクやMLH3タンパクとヘテロマーを形成し、ミスマッチの修復に働いていると考えられている。
[ MSH2 ]
ヒト染色体2p22-p21に存在し、合計16個のエクソンからなる。MSH2遺伝子は934個のアミノ酸で構成されるタンパクをコードしている。
MLH2タンパクは、MSH3タンパクやMSH6タンパクとヘテロマーを形成し、ミスマッチの修復に働いていると考えられている。
[ MSH6 ]
ヒト染色体2p16に存在し、合計10個のエクソンからなる。MSH6遺伝子は1360個のアミノ酸で構成されるタンパクをコードしている。
MSH6タンパクは、MSH2タンパクとヘテロマーを形成し、一塩基のミスマッチ修復に働いていると考えられている。
[ PMS2 ]
ヒト染色体7p22に存在し、合計15個のエクソンからなる。PMS2遺伝子は862個のアミノ酸で構成されるタンパクをコードしている。
PMS2タンパクは、MLH1タンパクとヘテロマーを形成し、ミスマッチ修復に働いていると考えられている。
Palomakiらの報告では、変異検出症例の割合は、MLH1遺伝子に変異が検出された症例が32%、MSH2遺伝子が39%、MSH6遺伝子が14%、PMS2遺伝子が15%であったとされています15)

弊社では、リンチ症候群の遺伝子検査として、MLH1/MSH2/MSH6/PMS2遺伝子検査の受託を行っています。詳しくはこちらをご参照ください。

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その他の遺伝子

リンチ症候群の原因遺伝子として同定されている4種類の遺伝子―MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、PMS2遺伝子は、すべてMMR遺伝子です。一方、MMR遺伝子ではありませんが、リンチ症候群の原因遺伝子として知られている遺伝子にEPCAM遺伝子があります。EPCAM遺伝子はMSH2遺伝子の上流に隣接して存在する遺伝子です。EPCAM遺伝子の欠失がMSH2遺伝子の発現低下の原因になることがあり、その結果として、MSH2遺伝子そのものには変異はなくても、生殖細胞系列のEPCAM遺伝子の欠失がリンチ症候群の原因になっている症例が報告されています19)。EPCAM遺伝子の欠失は、MLPA法(MLH1/MSH2 MLPA)で解析することができます。

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遺伝子変異の検出率

リンチ症候群を疑われる家系において原因遺伝子の遺伝子検査を行った場合に必ず変異が検出されるわけではありません。どのような集団を対象にして遺伝子検査を行ったかで、変異の検出率は異なります。

例えば、大腸がん症例(1066症例)を対象にしてMMR遺伝子変異(MLH1/MSH2/MSH6/PMS2)を検索したところ、変異が検出されたのは23症例(2.2%)でした16)

また、リンチ症候群の可能性があるとして遺伝カウンセリングを受けた285家系を調べた研究では、家系をアムステルダム基準やMSI検査結果で分類した上で、MMR遺伝子に変異が検出された症例数が報告されています17)


MMR遺伝子の変異検出率17)
分類 MSI検査 症例数 MMR遺伝子変異あり
症例数
検出率
アムステルダム基準に該当する   60 51 85%
  陽性 43 43 100%
  陰性 17 8 47%
アムステルダム基準に該当しない   188 12 6%
  陽性 17 10 59%
  陰性 171 2 1%
50歳未満での大腸がん発症、
家族歴なし
  37 5 14%
  陽性 5 5 100%
  陰性 32 0 0%
※この研究では、MLH1/MSH2/MSH6/PMS2遺伝子の解析が行われています。検出された変異には、病的変異かどうか確定していないものも含まれています。

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遺伝子変異の種類

これまでに報告されているMLH1遺伝子とMSH2遺伝子の変異には、エクソンの塩基配列解析で検出することができる変異(一塩基置換、一塩基もしくは数塩基の欠失や挿入)の他に、比較的大きな領域の重複や欠失があります。比較的大きな領域の重複や欠失は、一般的なダイレクトシークエンシング法では検出することができず、サザンブロット法あるいはMLPA法によって検出することができます。

このような大きな領域の欠失や重複は、MLH1遺伝子では10~40%で、MSH2遺伝子では30~50%で検出されています17) 30) 31)

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浸透率(penetrance)

MMR遺伝子変異の浸透率は100%ではありません。つまり、MMR遺伝子に変異がある場合に、必ず大腸がんやその他のがんを発症するわけではありません。MMR遺伝子変異がある場合のがん発症リスクについては様々な報告がありますが、例えば、NCCNガイドライン「Genetic/Familial High-Risk Assessment: Colorectal」 (Version 2. 2016)には、次のようにまとめられています。

 
リンチ症候群関連腫瘍の累計発症リスク(一般集団との比較)32)
がん 一般
集団
リスク
MLH1/MSH2
遺伝子変異あり
MSH6
遺伝子変異あり
PMS2
遺伝子変異あり
リスク 平均発症
年齢
リスク 平均発症
年齢
リスク 平均発症
年齢
大腸がん 5.5% 52~82% 44~61歳 10~22% 54歳 15~20% 61~66歳
子宮内膜がん 2.7% 25~60% 48~62歳 16~26% 55歳 15% 49歳
胃がん <1% 6~13% 56歳 ≦3% 63歳 ※合計6% 70~78歳
卵巣がん 1.6% 4~24% 42.5歳 1~11% 46歳 42歳
胆道がん <1% 1~4% 50~57歳 報告
なし
報告
なし
報告
なし
尿管がん <1% 1~7% 54~60歳 <1% 65歳 報告
なし
小腸がん <1% 3~6% 47~49歳 報告
なし
54歳 59歳
脳/中枢神経系腫瘍 <1% 1~3% ~50歳 報告
なし
報告
なし
45歳
皮脂腺腫瘍 <1% 1~9% 報告
なし
報告
なし
報告
なし
報告
なし
報告
なし
膵がん <1% 1~6% 報告
なし
報告
なし
報告
なし
報告
なし
報告
なし
※ 70歳までの胃がん、卵巣がん、小腸がん、腎盂がん、尿管がんの発症リスクの合計

リンチ症候群では、大腸がんや関連腫瘍のリスクが高いことから、定期的な検診(サーベイランス)が推奨されています。日本大腸癌研究会「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」に記載されているサーベイランスは、こちらをご確認ください。NCCNガイドライン「Genetic/Familial High-Risk Assessment: Colorectal」 (Version 2. 2016)では、上記の表のように原因遺伝子によって関連腫瘍の発症リスクや年齢が多少異なることを考慮して、原因遺伝子ごとに異なる内容のサーベイランスが推奨されています32)

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MMR遺伝子変異とがんの特徴

MMR遺伝子に変異がある場合、大腸がんは一般集団と比較して若い年齢で発症することが多いとされています。また、大腸がんの場合、同時性または異時性に大腸がんが多発する場合があること、右側結腸に発生する頻度が高いことなども知られています。詳しくはこちらをご確認ください。

稀ではありますが、MMR遺伝子にhomozygousあるいはcompound heterozygousな変異の検出例があります。この場合、非常に若い時期(20~30歳まで)に、大腸、子宮内膜、脳などに腫瘍が発生することが報告されています6)

また、MMR遺伝子の生殖細胞系列の病的変異が、臨床的に他の症候群と診断されている症例で検出されることがあります。大腸がんと脳腫瘍の併発を主徴とするTurcot症候群では、MLH1遺伝子やPMS2遺伝子の生殖細胞系列の変異が報告されています。リンチ症候群の関連腫瘍と皮脂腺腫瘍を合併する症例は、Muir-Torre症候群と診断されていることがあります。Muir-Torre症候群では、MLH1遺伝子やMSH2遺伝子の生殖細胞系列の遺伝子変異が報告されています18)

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