リー・フラウメニ症候群(LFS)の
遺伝学的検査
TP53遺伝子検査

リー・フラウメニ症候群(LFS)とは

リー・フラウメニ症候群(Li-Fraumeni syndrome:LFS)は、生殖細胞系列におけるTP53遺伝子の病的バリアントを原因とする遺伝性疾患です。LFSでよくみられる腫瘍は軟部肉腫・骨肉腫・乳がん・脳腫瘍・副腎皮質がんで、これらはLFSコア腫瘍といわれています。
LFSには以下のような臨床診断基準(表1:古典的LFS基準)とTP53遺伝子検査のための基準(表2:Chompret基準)があります。

表1 LFS臨床診断基準(古典的LFS基準1)

以下の全てを満たす場合

  • 発端者が45歳未満で肉腫と診断された
  • 第1度近親者が45歳未満でがんと診断された
  • 第2度近親者以内に45歳未満で診断されたがん患者、あるいは肉腫患者(診断時の年齢問わず)がいる

表2 TP53遺伝子検査のための基準(Chompret基準2)

以下のいずれかに当てはまる場合

  • 発端者が46歳未満でLFSコア腫瘍に罹患しており、第2度近親以内に少なくとも1人が56歳未満でLFSコア腫瘍の既往がある、もしくは年齢問わず多重がんの既往がある
    ※発端者が乳がんの場合、乳がんを発症した近親者を除外
  • 発端者が多重がん(多発性乳腺腫瘍を除く)に罹患し、そのうち2種類はLFSコア腫瘍であり、46歳未満で最初のLFSコア腫瘍を発症している
  • 副腎皮質がん、脈絡叢がん、過形成亜型横紋筋腫の患者である
    ※発症年齢、家族歴は問わない
  • 31歳以下の乳がん患者である

一方、LFSでは、Chompret基準を満たさないTP53遺伝子の病的バリアント保持者が25%、新生突然変異の症例が25%存在するとの報告があります3)。そのため、Chompret基準を満たさない場合であってもLFSが疑われる症例にはTP53遺伝子検査を行うことが推奨されています3)

遺伝学的検査

TP53遺伝子の病的バリアントが検出された場合、LFSと確定診断されます。

英国では、古典的LFS基準を満たす家系のTP53遺伝子病的バリアント検出率は83%であると報告されています4)。また、日本のLFS家系を対象とした研究では、TP53遺伝子に病的バリアントが検出された家系のうち、66.7%が古典的LFS基準あるいはChompret基準のいずれかを満たしていたと報告されています5)
NCCNガイドラインでは、これらの基準のいずれかを満たす場合や小児の低二倍体急性リンパ芽球性白血病症例、また、50歳以下の乳がんの既往や卵巣がんの家族歴があるなど、遺伝性腫瘍の特徴に当てはまる場合にTP53遺伝子検査やマルチジーンパネル検査を受けることが推奨されています6)

遺伝学的検査を行う意義

TP53遺伝子の病的バリアントを検出することによりLFSと確定診断することは、LFSに合った医学的管理を行う根拠となります。例えばLFSは生涯にわたり複数のがんに罹患するリスクがあるため、がんの早期発見・早期治療を目的としたがんサーベイランスの実施やリスク低減乳房切除術について検討することが推奨されています3)6)。また、二次がんの発生を回避するため、可能な限り放射線被ばくや照射、アルキル化剤の使用(治療上不可欠な場合を除く)を避けることも推奨されています3)
また、LFSと診断された方(発端者)の血縁者においては、発端者で見つかった病的バリアントの有無のみを確認するシングルサイト検査を行うことができます。発端者と同じ病的バリアントが検出された場合、未発症の時期から効果的なサーベイランスを実施することで疾患の早期発見・早期治療に結びつけることができます。また、病的バリアントを持たない血縁者では、必ずしも必要のない過剰なサーベイランスの実施を回避することができます。

遺伝形式と浸透率

LFSは常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式をとります。TP53遺伝子に病的バリアントが検出された場合、その方の子どもには性別にかかわらずそれぞれ1/2(50%)の確率で同じ病的バリアントが受け継がれます。
LFSは、生涯にわたって様々な臓器で原発性がんを多発するリスクが高い遺伝性腫瘍です。TP53遺伝子に病的バリアントがある場合、LFSに関連するがんの生涯罹患リスクは男性で約75%、女性でほぼ100%と報告されています3)

受託要件

当社にて遺伝学的検査を受託するにあたっては、【受託実施指針】に伴い、「体制確認書」の提出をお願いしています。
ご依頼いただく際は、お問い合わせください。

検査項目

検査項目 検体量
(末梢血)
保存条件 検査日数 検査方法
全血2ml 冷蔵 21~22日 NGS法およびMLPA法
TP53
スクリーニング
TP53遺伝子の全翻訳領域の10個のエクソン(エクソン2〜11)と隣接するイントロン領域について塩基配列を解析します。あわせてエクソンレベルの比較的大きな欠失や重複(MLPA法)も同時に解析します。 全血2ml 冷蔵 21~22日 NGS法およびMLPA法
シングルサイト シングルサイトにつきましては、こちらをご確認ください
【ご注意ください】
  1. 1)造血器腫瘍を発生したことのある被検者は、検査が出来ない場合があります。別途ご相談下さい。
  2. 2)EDTA 2Naによる採血を推奨しています。
  3. 3)所要日数は、検体を受領した翌日を起算日として、祝日を除いた日数です。
  4. 4)遺伝子の5’UTRや3’UTRおよびイントロンの深部(エクソンとの境界部から離れた領域)は解析の対象外です。

参考文献

  1. 1)LI FP, Fraumeni JF et al, Cancer Res 1988:48:5358-5362
  2. 2)Bougeard G, et al.J Clin Oncol. 2015 Jul 20;33(21):2345-52
  3. 3)リー・フラウメニ症候群診療ガイドライン2019
  4. 4)Mai et al.2012 Oct;205(10):479-87
  5. 5)Funato M et al.Cancer Sci 2021 May 1 ;112(7):2821-2834
  6. 6)NCCN Guidelines,Genetic/Familial High-Risk Assessment:Breast,Ovarian, and Pancreatic Version1.2023
    https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/genetics_bop.pdf